FF14世界(三大州)における英雄信仰(光の戦士信仰)と神―神と見なされる存在―


※以下、ネタバレ注意です。

◆はじめに
 これまでの日記でも、執筆者はことあるごとに「神、神、神」と、まるでテンパードのようにエオルゼア(含むFF14世界)の神々について妄想を膨らませてきたが、今回発売された『EncyclopediaEorzea VolumeⅡ』(以下『EE2』と略記する)でも、「東方地域の信仰」「エオルゼアの宗教」「十二神の守護聖人」と、神や神話に類する多くの情報が掲載されていた。前書の『EncyclopediaEorzea』(以下『EE1』と略記する)と突き合わせて読むと、知的興奮が高まってくる、最高の書である(やはりテンパード化の危険あり)。
 今回も色々な妄想を垂れ流しておこうと思います。備忘録的な意味も込めて。

◆聖人信仰があるのなら英雄信仰(光の戦士信仰)もある!?
 今回の『EE2』でとても興味深かったのは、「十二神の守護聖人」である。聖人とはそもそもどのような存在であったのか、その聖人の認定過程や、リーヴプレートの絵柄の意味など、今回の説明で漸く理解できた。『EE2』では聖人を以下のように説明する。

「古くからエオルゼアの各地では、偉業を成し遂げた人物や人生の模範となるような徳の高い人物を、聖人と呼ぶ風習がった。彼ら聖人は、徳行に応じた神性を有するかみと関連づけられ、その祝福を受けた者として崇敬の対象となっているのだ。」(『EE2』26頁)

 この聖人の存在が次なる妄想のきっかけとなる。聖人信仰(「崇敬の対象となっていた」26頁)があるのなら、英雄信仰があっても良いのではないか、という妄想である。
 『EE2』を読み進めていくと、不思議と「英雄」という言葉が目に付く。おそらく、そのように本書はしくまれているのだろう。そして、英雄信仰とまではいかなくとも、英雄が古の時代より語り継がれている事実が紹介される。

「帝国の根拠地でもあるイルサバード大陸では、古の時代より、「ゾディアックブレイブストーリー」と呼ばれる英雄譚が語り継がれてきた。」(『EE2』302頁)

 英雄という称号は、現在の光の戦士だけに与えられたものではない。古の時代から英雄なるものの存在があったことをここでは改めて指摘しておく。
 さらに興味深いのが、アジムステップのSモブ「オルガナ・チョロー」の存在である。この存在については次のように解説されている。

「大草原に住まうアウラ・ゼラには、一族の偉大な英雄や勇士たちの人生を石人に刻むという、独特の風習がある。そして英雄オルガナの人生が刻まれたオルガナ・チョローは、その記述を体現している。今も、ある目的のために草原を彷徨っているのだから。英雄オルガナは、ヒマー族らしく、双子の妹がいたそうだ。そして彼女は、殺された妹の復讐を果たした血なまぐさい逸話で知られる存在なのだ」(『EE2』291頁)

 英雄を体現した魔物(モンスター)がいるという点も重要であるが、アウラ族にも英雄がおり、その英雄が「石人に刻む」という風習により語り継がれている点である。英雄もまた聖人のように「崇敬の対象」であったことは疑いのない事実であったと考えられる。

◆第六霊災から人々を救った英雄と「導きの星=ラールガー」
 ここでふと想起されるのが、第六霊災で活躍した英雄の存在である。『EE1』『EE2』では次のように紹介されている。

「大洪水がエオルゼア全土を呑み込んだという水の厄災「第六霊災」においては、十二賢者と呼ばれる英雄が人々を救ったとされている」(『EE1』15頁)
「第六霊災の際、洪水から多くの民を守った海兵団長にして十二賢者に数えられる古の英雄、ゴルバス・ロンバス」(『EE2』215頁)


 古の英雄(十二賢者やゾディアックブレイブ)と現代の「光の戦士」の共通点は、いずれも「マザークリスタル」のビジョンを視ることで導かれ、「光のクリスタル」としてその力の一部を託されていること、異能「超える力」を有していたこと、があげられる(『EE1』15頁)。古の英雄は、古の「光の戦士」と捉えても差し支えないだろう。
 さて、第六霊災の大洪水を救ったとされる古の英雄であるが、英雄以外にも大洪水から人々を救った存在が現代にも伝わっている。それが次に見えるように「導きの星」=「壊神ラールガー」である。

「大洪水がエオルゼア全土を襲った第六霊災において、彗星の輝きに導かれるようにしてアバラシア山脈のギラバニア高地に登り、難を逃れた人々がいた。彼らは、自らの命を救ってくれた「導きの星」に感謝を捧げ、破壊と彗星を司る男神「ラールガー」を強く信仰するようになったという」(『EE2』22頁)

 さて、ここで素直な感想として出てくるのは、英雄と「導きの星」は別の存在なのか、という点である。英雄=「導きの星」と考える(妄想する)ことはできないのだろうか。
 ここで思い出すべきは、第七霊災後の人々が第六星暦で活躍した英雄の存在(姿かたち・名前)を思い出すことができなかった、という現象である(『EE1』55頁)。しかし、彼らの偉業だけは覚えていた(『EE1』15頁)。
 この現象は、第七霊災に限ったものなのだろうか。第六霊災の時も同じような現象は起こらなかったのか。自分たちを救ってくれた英雄の名も姿も思い出せず、しかしその偉業だけは覚えている。それが1000年以上語り継がれる中で「導きの星」と呼称され、いつしか彗星を司る「ラールガー」信仰へと結びつく・・・といったような妄想。
 そして、これは第六霊災に限ったことではないのではないか、というさらなる妄想も展開できる。それは、「霊災のような歴史の転換点には、必ずといっていいほど「光の戦士たち」に似た英雄が現れたと記されているのだ」(『EE1』15頁)という記述が、この妄想を裏打ちするのである。その時代時代に活躍した英雄が、信仰の対象となった可能性、さらには神とまで崇められた可能性はなかっただろうか。東方にも神格化した偉人(ガンエンなど)が存在したことも、この妄想を逞しくする(『EE2』19頁)。十二神信仰と英雄信仰の関係性も気になる所である。
 ちなみに、「導きの星」や「流星群」(『EE2』24頁)、「彗星」(『EE2』23頁)といった「流れ星」関連の単語も、『EE2』にはやけに目に付く。第六星暦時代、多くの冒険者が流れ星を見たという体験や、星の祝福といった観点から、とても重要な気がするので改めて指摘しておく。

◆獣人の英雄
 『EE2』で興味深いのは、歴史に対する疑義や現在の定義への疑義が、露骨とも言って良いほどに強調されていることだ。
 ヒトと獣人の区別についても、ヒトを自称する我々が勝手に(政治的・経済的理由で)そう区別しているだけである、ということが『EE2』では明記されている(250頁)。
 その考えのもとでは、「獣人の英雄」という本稿の表現が、そもそも間違っているわけではあるが、英雄はヒト種族であるという固定観念も捨て去る必要がある。それを裏付けるように、聖人においても、「聖タタルン」などタタルン族の商人が、サリャクの聖人となっている(『EE2』29頁)。獣人とされる「タタルン」をヒトと区別することなく、聖人に列したシャーレアン(聖人選定会議「ルートシュテウム会」)の慧眼は流石である。
 ここで重要となるが、獣人の英雄が、獣人の信仰の対象ともなったのではないか、という点である。獣人の英雄が獣人の神として崇められている可能性である。
 この妄想を裏付けてくれる存在が、コウジン族の神、豪神スサノオである。スサノオは、昼と太陽を統べる神「アマテラス」、夜と月を統べる神「ツクヨミ」に次いで生まれたという記述から(『EE2』239頁)、十二神のサリャクかリムレーンに相応する神と考えられるが、特に重要なのは「スサノオには英雄としての側面もあり、人々に仇なす悪しき者が多かった神代において、さまざまな怪異を打倒し、冒険を繰り広げた」(『EE2』239頁)という記述である。
 スサノオを紹介する単語として「英雄」「冒険」が使用されている。さまざまな怪異を倒し、冒険を繰り広げた英雄、という説明は、そのまま我々「光の戦士」の説明にもなる。
 遥か昔から獣人にも英雄(光の戦士)なる存在がいて、それをコウジン族が神(スサノオ)として崇めている、という推測が可能であろう。獣人による英雄信仰を裏付けるものでもある。

◆神話(伝承)に登場する生物⇔神話を与えられた生物
 英雄そのものが信仰の対象になった可能性だけでなく、その英雄に縁のある生物(魔物・モンスター・獣)もまた、信仰の対象となった可能性もあるかもしれない。
 例えば、麒麟や鳳凰、クァールレギナ、イクシオンといった幻獣は、神や英雄と密接に関係する獣である。麒麟に関しては、「才気あふれる英雄や、良き統治を行う王の前に現れる吉兆としても伝えられており、東方の英雄譚には麒麟が現れることが少なくない(実際は魔法生物の一種と見なされているが)」(『EE2』298頁)と説明されており、英雄と縁のある幻獣であることが示唆されている。
 イクシオンについては、さらに別の妄想を行うことが可能である。イクシオンはギラバニア地方に伝わる雷を操る巨大な馬であるが、ラールガー星導教の教典によれば、「壊神ラールガーの愛馬であり、その神力を得て、大地を焦がす稲妻の力を得るようになったとされている」(『EE2』299頁)と紹介がある。 一方で、魔法都市「マハ」の古文書の中に、軍馬に魔法能力を付与する実験が行われ、結果として雷撃魔法を行使する個体を生み出すことに成功したという記述が見られることから「マハ由来の軍馬」(『EE2』299頁)とする説もあると紹介されている。
 後者の「マハ由来の軍馬」説をとると、神話とは関係ない実存の生物を、神ゆかりの存在として勘違いして信仰してしまった(神話を逆に与えてしまった)可能性を指摘できる。例えば、女神「リムレーン」が解き放ったとされる伝説の海蛇「サラオス」が、実はアラグ帝国由来のシーサーペントで(※1)、それを大洪水の際にサハギン族がリヴァイアサンと認識し信仰した、などの説もこれで説明できる(拙稿コメント欄参照)。

(※1)海神リムレーンとシーサーペント
・シーサーペントというのは「大海蛇」のことで、高地ラノシアにある「サラオスの亡骸」のサラオスとは、もともとシーサーペントの名前であるらしい。
・創世記神話によれば、かつてハイデリンができたとき水がなかったため、海の神リムレーンはまずシーサーペントを2体創ってこの地に水を溢れさせたという。
・このシーサーペントの名前が「ペリュコス」と「サラオス」。
・旧FF14には、二匹が生まれた「双蛇の間」という所があったらしい。
(以上、ff14wikiさんより)
・南部森林の蛇殻林もシーサーペントの抜け殻説が最有力か。


◆東方の神からエオルゼアの神を捉え直す―英雄テンゼンと四聖獣―
 東方でもっとも有名なお伽噺、「テンゼンの鬼退治」には、英雄テンゼンに付き従った四体の獣が登場する。これは上記で指摘した、英雄(テンゼン)とその英雄に縁のある生物(四聖獣)に他ならない。そして、東方の神的存在である瑞獣の特徴は、エオルゼアの神を考える上で大変重要な示唆(妄想の種)を与えてくれる。

「東方地域に伝わる伝承によれば、たとえ獣であれども、種の寿命を超えて100年の時を生きることができれば、妖力を得て自我を芽生えさせるという。そして、さらに1000年の時を生きることで、やがて獣たちは、人知を超えた神通力を獲得。こうした存在を東方では「瑞獣」と呼び、そうした存在への変異を「裏返る」と表現する。」(『EE2』300頁)

 1000年を生きた生物は、自我を持ち、人知を超えた神通力を獲得するという。神通力は神力(神の如き力)と捉えてもいいだろう。この捉え方を、エオルゼアの魔物やモンスターにも当てはめて考えてみてはどうだろうか。1000年以上前から存在するエオルゼアの生物(少なくとも第五西暦以前)が裏返り、神力を得て神的存在(瑞獣的存在)となった可能性はないだろうか。
 先述のイクシオンを「マハ由来の軍馬」として考えた場合においても、マハ(第五星暦)時代から生きてきた獣であれば、「裏返り」人知を超えた力(神力)を得たと考えることもできる。

◆裏返る可能性のある生物=神とみなされる可能性のある生物
 つまり、長寿の生物や、古の時代から存在する神話や伝承の類いの生物(魔物・モンスター・獣など)は注目に値する存在といえる。
 例えば、異能を持つイゼルは英雄ともいえる人物であったが、彼女が使役していた「ホアハウンド」は「古代獣」と説明されているように、古い時代から存在する獣である(前述のサラオスなども「古代生物」と言われていた)。また、冷めた月光のように美しい毛並みを持つことから伝説の幻獣、月狼「フェンリル」の名で呼ばれていた(『EE1』276頁、『EE2』152頁)。「月」という単語から、メネフィナに縁のある生物であったとも指摘できる。神に縁のある生物もまた、神力を有しているという逆説の立場から、裏返りの可能性のある生物として注目に値する。
 以下、神に縁のある魔物や長寿の魔物(モンスター)を列挙してみよう。

・ローデント「農神ノフィカのしもべ」(『EE1』275頁)
・ウラエウス(NM)「二神話における太陽神アーゼマのしもべ」(ff14wikiさんより)
・ベヒーモス「蛮神バハムートの落とし子」(『EE1』277頁)
・グレートバッファロー(NM)「大氷雪時代に繁栄を謳歌していた、巨躯、長毛の水牛古代種。近年は個体数が激減し、アルデナード大陸では絶滅したと思われていた。三百年を超す長寿命を誇り、その分厚い皮には古の折れた剣先や矢尻が埋まっていると伝えられる」(ff14wikiさんより)
・ヴァナラ「東方地域の伝承では、しばしば神の使いとして描かれる」(『EE2』252頁)
・ベニツノ「東方地域では、太陽を司る神「アマテラス」の使いとされる」(『EE2』258頁)
・アルドゴート「イシュガルドの伝承「流れる橋の物語」でも悪食の一族として登場する」(ff14wikiさんより)
・ウンクテヒ「モラビー湾岸地域には古くから伝わる伝承がある。それは、海から人喰いの怪物、ウンクテヒが上陸してくるというものだ」(『EE2』272頁)※リヴァイアサンに似ている
・Bモブキワ「南洋諸島の甲殻類の神から採ったとのこと」(『EE2』288頁)

 以上のように、神に縁のある生物、長寿の生物、古代から存在する生物などは確実に存在している。東方だけでなく、エオルゼアにも瑞獣的存在がいる可能性は高い。グリダニアの精霊などは、まさに瑞獣的存在といえるのかもしれない。

◆霊災(大災厄)を起こした実行犯は誰か
 瑞獣の特徴として重要な点は、上記の他にまだある。それは、十二神が星極性と霊極性という二面性があったように、瑞獣にも二面性が存在するという点である

「理性的な静かなる魂、ニギミタマが表に出れば、瑞獣たちは人々の守護者となり悪霊を討ったりもするのだが、荒れ狂うアラミタマが暴走すれば、神通力を以て大災厄を引き起こす」(『EE2』18頁)

 以上の点は、世界の理「闇と光の関係」の説明にも通じる(エオルゼアにおける極性論に類似した思想であるという指摘がなされている〔『EE2』14頁〕)。
 瑞獣が起こした大災厄と「霊災」との関係性も気になる所。霊災はあくまでエオルゼアで起こった災厄なので、東方で起きた瑞獣の大災厄とは別物であろう。一方で、東方にもエオルゼアでいう「霊災」なるものが、定期的に勃発していることも想像できる。
 エオルゼアの神、正しくは神と見なされた存在(神力をもった存在)が、「霊災」と呼ばれる大災厄を引き起こしたとも考えられる。それが英雄と呼ばれる者達だったのか、英雄や神に縁のある生物たちだったのか、はたまた1000年以上の時を生き神力を得た生物だったのか。アシエンもまた、古の英雄や光の戦士同様に「超える力」を有する存在であり、「英雄」的存在であったと考えると、霊災を引き起こしているのはアシエンという当り前の結論に落ち着くのかもしれない。
 ・・・いや、現代の光の戦士もまた「神狩り」と呼ばれている。神を狩る者は最早、神なのではないか。神を狩る力「神力」をもったヒトは、果してヒトなのだろうか。

史学者 kaede takagaki